創立者の言葉

公益財団法人 松前国際友好財団 創立者の言葉

日本への理解と世界の平和をめざして

私は現代の世界の様相を国家エゴイズムの相剋の中にあると見る。かつてローマ・クラブは、世界人類の将来を憂い、三つの危機を提唱した。それは、エネルギー不足、食糧不足、そして人口増加の危機を乗り越えない限り人類の恒久平和の道はないというものであった。 まさに至言というべきであるが、現代のような国家エゴイズムの相剋の中にあっては、平和への道は遠い。

しかしながら我々は、このような歴史の流れをただ茫然と見過ごしてはならない。 我が国が諸外国との間に平和のうちに存立し得るため、さらには今日の若き人材が21世紀において平和的な活動を容易ならしめるべく、日本の対外活動の強固たる基盤を今にして準備せんとしているのである。

そこに初めて、国家の存続と未来への道が開かれると確信しているのである。
我が日本国民は、第2次世界大戦の悲劇を体験し、二度と再び武力によって国威を発揚するがごとき行為を厳しく戒め、平和のうちに国家再建の道を求め、工業立国をめざす政策を進めてきた。以来、30数年を経た今日、諸外国との間で、特に貿易、経済の面でいろいろな摩擦が生じていることも事実である。

我々日本人はいま、この現実に襟を正し、いかにして共通理解の上に平和と繁栄の道を拓くべきかについて懸命の努力を続けている。

そこで私は、世界の国々の永遠の平和と友好、親善の道を求め、平和国家としての道を歩む縁となることを願い、本財団の創立を決意したのである。それは本財団の目的に明記するごとく、人種・性別・宗教・思想・国家体制の差別なく、外国国籍を有し、優れた資質を備えた新進気鋭の研究者、活動家を日本に招待し、日本に対する理解を深めてもらうことによって友好親善の道を拓き、両国間はもちろん世界各国相互の恒久平和に貢献したいとの願いをこめているのである。願わくば、このような趣旨に共鳴され、日本における研究活動を希望する有為な若き人材の応募を心から歓迎したい。

なお、本財団の発足にあたって、ドイツ連邦共和国の主宰するアレキサンダー・フォン・フンボルト財団の崇高な理念と実践に深く感銘し、本財団の設立に大いなる影響をもたらしてくれたことを銘記し、感謝とともに、本財団の目的と使命の達成にむかって懸命の努力を続けたい。

1979年6月
創立者 松前 重義 (1901〜1991)

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